◆さるかにばなしの内容
「さるかにばなし」もしくは「さるかに合戦」と聞いたらぱっと内容が思い浮かぶ人は多いのではないでしょうか。私の時代は国語の教科書に載っていたのかも知れません。
あらすじとしては、さるは柿の種しか見つけられず、かにはおにぎりを見つける。さるはおにぎりの方がいいのだが、かにには、
「柿の種は実をつければいっぱい柿を食べることができる」
と言って柿の種とおにぎりを交換する。
やがて柿は実をつけ食べられるようになるのだが、かににはその実を取ることができません。そのためかにはさるに実を取ってもらうのですが、さるは柿を独り占めしたいため食べられない堅い柿をかにめがけて投げてしまいます。
ここまではさるかにばなしもさるかに合戦も同じです。
分岐はここからで、柿を当てられたかにが怪我をするのか死んでしまうのか。
「さるかにばなし」はもちろん死にません。さらにかにの子供がかにの親と親しかった仲間を引き連れてさるに仕返しをします。
ここでも分岐があり、さるかにばなしは最後さるは反省してみんなと仲良く暮らしますが、合戦ではさるは死んでしまいます。
恐らく子供の目線で野蛮な話だからそうしてほしいと言う一部の声があったのでしょう。私は子供の頃何度も読んでもらいましたが、当時かにが死んだからといって残酷だとは思いませんでした。しかしこの作品の本質はそこにはないため、
「かにやさるを殺してしまうのは教育によくない」
「何でもかんでも過激な表現を削るのは過保護だ」
と言う意見は不毛だと思うのですが…あくまで私の見解ですが。
◆個性的なキャストの特徴を無意識に知る事ができる
さて、肝心の本質について掘り下げたいと思います。「さるかにばなし」のすごいところはキャストはさる、かに、かにの子供のがメインですが、その他にくり、はち、こんぶ、うす…と、
「なぜこのメンバーを集めた?」
という脈絡のない、かつさほどインパクトのないメンバーだということです(笑)。
そしてさるに復習するためみんなが一致団結するのですが、栗がぱちんと飛び、ハチが針で刺し、こんぶに滑って、うすが乗りかかる。それぞれの特徴を生かした攻撃で子供は無意識に彼らの特徴を知る事ができます。
さらにさるは木登りが得意、かにはハサミを使ってものを切る(実際切ることはあまりないし物語でも柿の芽に早く育たないとちょん切ると脅しをかけているだけですが)という場面でさるやかにはこういう特徴があるのかと自然と知る事ができるでしょう。
◆訴えかける道徳性
「さるかにばなし」はキャストについての素晴らしさの他に、道徳的観念から見ても優れている作品だといえます。
まずさるの柿の種とかにのおむすびを交換するシーンでは、目先のものより将来大成するものを選ぶ方がいいという教訓。さるがかにに柿を投げつけ怪我をさせるシーンは、悪いことをしたら自分にそれが跳ね返ってくるという教訓。かにの子供が泣いているとかにの友達がみんなで結託するシーンは、普段仲良くしていたら困った時に助けてくれると言う教訓をそれぞれ盛り込んでいます。
絵本で短い内容ながらも盛り込んでいることは多数あり、読み物として相当質の高い作品だと思いました。大人目線で深く読もうとするといろんな発見ができるため是非お子さんに読んであげてください。