◆ネズミにおむすびをあげる
「おむすびころりん」はそこまで裕福ではないおじいさんとおばあさんが登場します。
おそらくここがすでにポイントとなっていて、裕福でもないのにもかかわらずおじいさんがねずみにおむすびを三つもあげるというところが共感を得られるところだと思っています。
そしておじいさんは下心もなくおむすびをネズミにあげます(一応おむすびをあげたら歌が聞こえるという見返りはありますがあまりにも割に合わないところから下心はないと言っても過言ではないでしょうか。)
一個目は偶然落としてしまったおむすびが穴に落ちてしまい、もう二個は故意に落とします。もっと歌声を聴きたいおじいさんが穴に向かって叫ぶと穴に落ちてしまいます。ここでもネズミに会いたいというよりは、叫んだら偶然に落ちてしまったと言うところがその前の流れとかけられています。
◆お礼をもらう
穴に入ると、歌が好きなネズミたちがおじいさんを歓迎しています。おじいさんは歌が聴きたい、ネズミたちは歌を聴いてほしいと言う利害が一致するわけです。
その他に予期しないご馳走がはごばれてきます。楽しいひと時を過ごしたおじいさんはネズミたちから大きいつづらと小さいつづらどちらがいいかと聞かれ、選択した小さいつづらを選びます。
おじいさんが小さなつづらを選んだ理由は、自分の体は大きくないからそれに見合った小さなつづらを選んだわけですが、ここでは、
「謙虚に自分の見合ったものを選んだほうが得をする」
と言うことを教訓にしている気がします。
大きいつづらに何が入っていたかは分かりませんが、小さなつづらには小判が入っていて、結果的にそれは近所に配れるほどの大金だったため、こちらを選んで正解だったことを示唆しています。
◆隣のおじいさんが出現する
「おむすびころりん」の面白さはここからで、隣のおじいさんの登場です。
小判をもらったおじいさんを見た隣のおじいさんも、ネズミたちから小判をもらおうとおむすびを一つ持って穴に向かいます。特に苦労もせず穴を発見し、下心丸出しで穴におむすびを落とします。
歌声が聞こえてきたので自分から穴の中に飛び込み、見事ネズミたちの元へと現れます。ネズミたちはそれでもおじいさんをおもてなしします。おじいさんはつづらがあることを発見すると、
「ご馳走はどうでもいい」
といきなり猫の鳴き真似をしてネズミを追っ払うことにします。ネズミたちは慌てて逃げたため、あたりの明かりは消え、おじいさんはそこに一人取り残されてしまいます。そんな状況でつづらを持ち出せるわけもなく、命からがら穴の中から這い出ることができました。
ここでは、
「欲張ったら何も得られない」
という教訓と、
「何かを得たいのであれば、じっと待つこと」
ということを言っているのではないでしょうか。
「おむすびころりん」では対比表現を学べるうえ教育にもよく、日本人の道徳観念とバッチリ一致している絵本のため、親としてはぜひ子供に読ませたい本として挙げられるでしょう。